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変なスイッチが入って勢いでアレでアレなお話を書いているのですが、我に返ると途端に羞恥心に駆られるのでこれを書いているのは私ではないと自己暗示をかけています。
対面で本を売っていた時にはこんな羞恥心なんて感じたことは無かったのですけど不思議なものです。 そして物書きさんあるあるだと思うのですが、自分が書いたお話は基本的に自分が読みたいと思って書いたものなので何度読み返しても好きなものですよね。 昔の本を読み返してみたらやたらツボにハマって書いた時の自分を褒めたくなりました。 今、一番気に入っているのはやはり「あの夏の邂逅」 蔵書閣で魏嬰が描いたあの絵を藍湛が大事に持っていたら良いのにと思って書いたお話ですが、蔵書閣には夢が詰まっています。 cqlの蔵書閣の雰囲気とシーンが大好きです。 座学時代の校服も大好き。 可愛い魏嬰とプリプリしている藍湛を見ているだけで楽しくなります。 改めて5話を見るとやっぱりそっと丁寧に文机に絵を置く藍湛の指先が優しくて、絶対静室に持ち帰ったでしょうと言いたくなります。 今日のお昼ご飯。 先週と同じお弁当+冬瓜の海老あんかけ。 パストラミビーフは玉ねぎのみのこちらの方が好みです。 昨日も今日もお弁当だったので野菜が盛り沢山。 PR
改めて風起洛陽。
4話までの勢いがちょっと無くなったかなという感じと、高秉燭と武思月の蘇生シーンで若干興冷めした感がありました。 サスペンスだと思っていたのに、あれ、男女のこういう要素が入ってしまうの?となったのが正直なところです。 全く求めていなかった……。 5話で武思月が高秉燭の首に小刀を突き付けてゾクゾクするシーンがあったのに残念。 個人的に李北七は武思月を好いていると思っているのでこの2人は良いのですが、高秉燭はちょっと嫌かもしれません。 何故と言われてもよく分かりませんが何となく。 二郎はとりあえず毎回ツッコミどころが満載。 父上の検視に立ち会うと男気を見せたのにのっけからアレですし、どう考えても効率の悪い書物の散らかしっぷりに、嫁にに対する酷い仕打ち、は、嫁も嫁で気にせず押せ押せなので相手の気持ちを考えない似た者夫婦かもしれませんが。 妓館でのガチガチプルプル二郎と強い嫁の姿でこの夫婦はちょっと可愛く見えてきました。 それにしても妓館での顔面蒼白二郎の「やめてください」「やめてください」が笑えます。 そしてそんな旦那を気遣う強い嫁。 ピコーンで二郎が何を閃いたか気になります。 それからやはり百里家はいろいろ巻き込まれているようなので二郎のこの先が気になります。 個人的には二郎の身近な人物が関わっていそうだなと思っているので、それが実は嫁でも面白いかもしれません。 それと5話で二郎が高秉燭に百工結びをした姿がどうしてもcql寒潭洞で抹額で結ばれた忘羨を連想してしまいがち。
1ヶ月で4.7キロ落ちました。
1年近く増量状態が続いていて、特にここ半年は食べたい放題でなかなか酷かったので、体が軽くなってだいぶ楽になりました。 筋トレも毎日しているのでムキムキです。 むちむちがムキムキに。 すぐに筋肉がつくタイプなので無駄なお肉が落ちると顕著に表れます。 腕と背中は結構ムキムキ。 キュッとすれば腹筋も見えるようになってきました。 下半身も鍛えたいのですが、ダンベルが好きなのでどうしても上半身に付きがちです。 脚の筋肉ってどうやったらつくのかしら? まあ、これが続けば良いのですけどね。 コロナ禍でお取り寄せにハマッて、クッキー、焼菓子、ケーキ、しまいには塩っぱい系のポテチにまでいったのがやはり良くなかったですね。 粉もの甘い系、スナック菓子は当たり前ですが太ります。 今はお菓子は全く食べなくなりましたし欲することもなくなりました。 毎日ハーゲンダッツは食べていますけど大丈夫。 胃が小さくなったのでご飯も普通の量で大丈夫です。 本当にこれが続けば苦労しないのですが。 今日もお買い物と散歩でたっぷり歩いてきました。 春先に買ったペールグリーンのコートがとても気に入っていて、それを着てスニーカー履いて、こちらも最近買ったお気に入りのサコッシュを掛けてお出掛けするのが楽しくて仕方ありません。 ついでにペールグリーンとグレーの日傘もお気に入り。 ご近所オシャレも楽しいものです。 先日後輩と話をしていた際、70になっても私はオシャレをしたいと話していました。 髪が真っ白になってシワシワになっても、黒茶灰色しか着ないようなおばあちゃんにはなりたくありません。 何なら今と同じ格好をしたいくらい。 幾つになってもオシャレを楽しみたいです。 今日のお昼ご飯。 RF1の玄米ロール入り 30品目のSalad bento。 お皿に盛り付けるとやっぱり盛りだくさん。 お弁当はそのまま食べるよりお皿に盛り付けた方が満足度が違います。 パストラミビーフも玄米ロールもやっぱり美味しいです。 お肉苦手ですが、ニョクマムチキンも食べられました。 パストラミビーフがとにかく美味しいです。 玄米ロールも大変好み。 これだけで販売してくれたら良いのにといつも思います。 お弁当シリーズはいろいろちょっとずつ食べたい私にはピッタリです。 +サラダ1品で大満足。
20話の乱葬崗から戻って来た魏嬰と藍湛のギスギス期の始まりが大好きです。
普段無口な男が声を荒げる「魏無羨!」と普段饒舌な男の冷ややかな「藍忘機」が堪りません。 静かだからこそ不気味に感じるcql魏嬰が好きです。 オケコンで台詞付きで流れる映像が秀逸でした。 「魏嬰」と呼ばれて、きたなという感じに身構える魏嬰が痛々しい。 そして帰ってくれと言いながら、立ち去る藍湛を切なげに見送る魏嬰がもう……。 ギスギス期の忘羨は何度見てもそのもどかしさが堪りません。 そしてギスギスしながらめちゃくちゃ視線は交わる時期でもある。 と、何度書いたか分かりませんがまた書いておきます。 昨日は風起だけで終わって陳情令を見なかったら物足りない感が凄かったです。 やはり1日1回は見ないと気が済まない。 妓館でお姐さんたちに囲まれて拳握り締めてプルプルガチガチになってしまうウブな二郎に笑ってしまいました。 それにしても「なぜだ?」って、そんな。 妓館も知らないお坊ちゃん。 そして娼妓から「やめてください」とプルプル震えながら逃げる旦那を奪い返す嫁が強い。 最初の4話の勢いはさすがに無くなりましたね。 面白いですが、ちょっとコメディ要素が強くなってきたかしら。 息をつく暇もないあの勢いが好きだったので、アクションが無くなるとちょっと物足りない感じです。 とりあえず最後のプルプル二郎に全部持っていかれました。
先日、久しぶりに手紙を書いたのですが、家にある便箋が「白木蓮」と「芍薬と兎」で藍湛を思い浮かべてしまいました。
こういうところは幾つになっても変わりません。 そして封筒の切手代が分からない……。 何度見てもcql39話の潭州の町で兎の灯籠を手に魏嬰と並んで子弟たちの元に戻る藍湛が嫁を連れた旦那(でもまだ知己) 新婚ですかと言いたくなります。 あれを見て子弟たちも何か察したりしないのかしら。 いつも思いますが、cql藍湛の戒鞭の痕はもっとえげつない程あった方が良いですし、実際はそうだと思っています。 あの美しい顔の男の背中が一面傷痕だらけと言うのが堪りません。 傷が癒えるまでは牀榻が血だらけになったとか、苦痛に顔を歪めていたとか、そういうのが好きです。 中国時代劇ドラマを見ていていつも思うこと。 蝋燭が沢山で火事が心配。 風起なんて何処もかしこも物凄い蝋燭なので、美しいけど灯すのも消すのも管理するのも大変だなと思いながら見てしまいます。 でも連なるような燭台に揺れる炎が本当に美しい。
いつも思いますがやっぱり私が好きなのはcql知己忘羨。
読了済みですけど、原作の忘羨はまたちょっと別ものです。 ぎりぎり知己知己が好きなので、見ていてほう……と吐息を溢したくなるようなもどかしい忘羨が好きです。 色気のある感じは好きですが、直接的なものはあまり惹かれません。 いや、読むは読みますが(読むんかい) 昔から雰囲気ものが好きです。 「花蘇芳」のような日常の中の一瞬を切り取ったようなお話が好きなのですが、果たして雰囲気が伝わったのだろうかと疑問に思わなくもありません。 私の中では雨の音と雨の匂いも込みで映像が流れていました。 cql魏嬰の時々本当に驚くくらいの駄々漏れの色気が好きです。 そして美しい藍湛の好きなところを好きなだけ描写して個人的に大満足。 ところでハーゲンダッツを3つも食べたら寒くて仕方ありません。
自分のことだなとつくづく思います。
人事考課の面談をしていた際、唐突に課員から退職の話を切り出されたのですが、我ながらビックリするくらい動じませんでした。 あらあらどうしようと口では言ったものの、マジかよ、は?ふざけんなとか、どうしようどうしようとはならないのです。 まあ、なるようにしかならないし。 まあ、どうにかなるでしょう。 とりあえず早く帰って風起見たいしなとなるあたり楽観的なものです。 半年くらい前に何となく業務マニュアルの作成を指示していたあたり、勘が働いたのかもしれません。 ところで刀ステ、何だかよく分からないことになっていますね。 次作も次々作も私はいいかな。 意味のある配役だと思いますが、女性が演じる刀剣男士……うーん、どうなのかしら。 今日は久しぶりに陳情令の夷陵町中再会シーンを見ていたのですが、何だかんだで一番の名演技は阿苑(子役)だと思います。 そして50話にすっ飛んで別れ前の見つめ合う忘羨にはああとなっています。 藍湛の表情が本当に良いのですよね。 微笑み、決意……振り返る寸前の顔がいい顔をしているとしみじみ思います。
昨日UPした「あの夏の邂逅」
冒頭は凄く迷いました。 姑蘇はともかく雲深不知処は避暑地くらいの涼しさですよね。 原作読み返したりいろいろ調べて何か違うとも思ったのですが、無理やり繋げてしまいました。 姑蘇の夏は冷えるとか、姑蘇の夏は涼しいとかでは何だかぼやけてしまうような気がしたのであくまでも文章用です。 原作番外編で、深山の外では6月のカンカン照りの日差しが〜という記述があるので、姑蘇自体は暑いのかなと。 上海が東京と同じような気候というのにつられてしまった感がありますが、雲深不知処は那須とかそのあたりの感じかなと思っています。 何しろ中国は広いので、すぐ近くと思った場所が日本では県3つ分くらいだったりするので難しいです。 こういう設定を考えないとなかなか進まなくなります。 座学は4〜6月、5〜7月くらいのイメージですがどうでしょう。 川遊びをするくらいなので初夏あたりかしらと。 そして原作番外編を読んでいて、あれ?となりました。 6月のお話なのに、春の白木蓮が咲き、夏の蓮の実が採れ、秋の竜胆が咲く……? 陳情令でも赤く染まった楓の前に雪が降ったりしているので季節感は無いのかしら? そんな「あの夏の邂逅」はcql座学編、蔵書閣のシーンを見ていてふと思いついたのですが、軽い気持ちで打ち始めたら思いのほか長くなってしまいました。 書の話は当初の予定外。 藍湛の最後の台詞は不意にすとんとおりてきたものですがお気に入りです。 ドラマのいろいろな表情を思い浮かべながら読んで頂けると嬉しいです。 cql忘羨は本当に創作意欲を掻き立てられます。 正直なところ、全盛期並みに文章を書いているような感覚です。 いやいや突然中華沼にハマったただの社会人ですからね。 でも書けば読んで貰いたいと思いますし、読んで貰えたらやはり嬉しいものです。 こんなに人気のあるジャンルとは思いませんでしたが、固定CPだとこういうものなのかしら。 ところで先日久しぶりに読んだ十二国記の冒頭に出てくる項粱が持っている鉄笛を見て、魏嬰の笛も実は鋼で出来ているのでは?と一瞬思いましたが青竹ですよね。 陳情もおそらく竹? 射日の戦いでも血の不夜天でも金鱗台でも乱葬崗でも、魏嬰の笛は鋼にしか思えません。 剣さえ受け止める防御力。 そして今日もまた風起洛陽。 風起のリアルさは全てが徹底されているからかなとも思います。 陳情令を見ていると、付けまつ毛にカラコン、マニキュアといったものがどうしても目について違和感を感じてしまうのですが、風起は体型も様々ですし、あとは何よりモブがリアル。 陳情令のモブは何であんなにも演技をしていないのでしょうね? あの違和感が凄い気になります。 それにしても風起。 謎が謎を呼ぶ極彩色の糸が複雑に捩れたようなお話なので全く先が分かりませんが、二郎の父に毒を盛った人物は百里家の人間ということですよね。 何となく、本当に何となくですが、申非だったりしたら凄い話になるのではないかと思います。 二郎には悲劇でしかないのですが……。 しかしそんな展開は嫌いではない。 RF1のカラフル野菜のSalad bento。 お弁当シリーズはお得感もあるのでまた買ってみました。 色とりどりのおかずが沢山。 お皿に盛り付けるとこんな感じ。 やっぱり結構いっぱい入っています。 +サラダ1品にしていますが、正直ちょっと多いです。 パストラミビーフとオニオンのサラダがとても美味しいです。 お肉は苦手ですが、超薄切りのパストラミビーフは美味しく頂きました。 「あの夏の邂逅」 姑蘇の夏は暑い。 山深い場所にある雲深不知処には清流が流れ、麓の町よりは涼しく感じるものの、梅雨が明けたばかりの今は湿った風も吹き、いくばくかの蒸し暑さを感じずにはいられなかった。 雲夢の酷暑に慣れた身でも、まだ始まったばかりの暑さにはなかなか慣れるものではない。 魏無羨が遊歴から戻って、初めての夏を本格的に迎える。 あの山頂での別れから六月(むつき)。 冬を越え、寒さが過ぎ去り、春風が吹き、青々とした緑が生い茂るようになった頃にはもう、魏無羨は藍忘機に会いたくなっていた。 また会おうと言ったものの、今や仙門世家をまとめ上げる仙督ともなった藍忘機に気軽に会えるとは思ってもいなかった。 仙督という重荷を自ら背負ったのは藍家の為か、それとも先の事件で心を痛めた兄の為か。 いずれにしても、あの時、藍忘機が選んだのは魏無羨ではなかった。 共に行くことも、自分を引き留めることもしなかったのがその答えだと思っていた。 あの日の誓いを全うする為。 たとえ袂を分かっても生涯の知己であることに変わりはない。 藍忘機は一時の衝動のままに行動する男でもなければ、魏無羨のように自由の身でもない。 そう理解していても、藍忘機の選択はどうしてか魏無羨の心を深く抉った。 そんな身でありながら、たった半年ばかりですぐにこの地に足を踏み入れることに迷いも躊躇いも無かったわけではない。 厚顔を自称していながらも、どうやらまだ自分にも羞恥心というものは残っていたらしい。 それでも。 ただひと目会えれば。 そう思って雲深不知処を訪れたあの日、思いもかけず魏無羨を迎えてくれたのは藍忘機だったのだ。 近くを通ったから。 天子笑が飲みたくなったから。 我儘なリンゴちゃんが姑蘇の草以外を食べたがらないから。 取ってつけたようなそんな言い訳を並べてすぐに去ろうとした魏無羨を、けれど藍忘機は許さなかった。 大梵山で再会したあの日のように、しっかりと掴まれたあの手の強さを今も忘れられない。 『此処にいればよい』 藍忘機にそう言われ、静室で居を共にするようになって早や二月(ふたつき)。 暫くは魏無羨もそれなりに大人しくしていたのだが、結局生来の悪戯好きな性格は変わらないものだ。 前日までの戻り梅雨が上がったその日。 いつものように巳の刻に漸く起き出した魏無羨は、晴れ渡った青空を眺めながらも何処かに出掛ける気も起きず、珍しく静室に留まっていた。 ほどなくしてその日の執務を早々に終えた藍忘機が戻ったのを機に、このまま此処で過ごすのも悪くないと思う。 口数の少ない藍忘機とでは他愛も無い会話を楽しむことも出来ないが、まだ話しきれていない遊歴中の出来事や、子弟たちの夜狩に同行したこと、町に下りた時の出来事などを魏無羨が一人でつらつらと思いついたままに話し、藍忘機がそれに二言三言返してくれるだけで十分楽しかった。 遊歴中はロバしか話し相手がいなかったのだからそれも無理からぬことだ。 そもそも出会った頃から藍忘機の口数の少なさなど大して気にはしておらず、魏無羨にとっては些末なことだった。 無口で無表情の藍忘機の僅かな反応を見るだけで良かったし、そうさせるにはどうすれば良いのかを飽きもせず考えるだけで毎日が楽しかった。 あの頃よりも機微が表れるようになった顔はいくらかは分かりやすくなったものの、口数の少なさは今も変わらない。 たとえ魏無羨が一炷香喋り続けたとしても、藍忘機から返ってくる言葉は両手で数えられるほども無いに違いない。 けれどその数少ない言葉が時には思いもよらないようなものでもあり、藍忘機と話すことに魏無羨が飽くことはなかった。 そんな藍忘機と穏やかな時間を過ごしながらも、何もしないままゆるゆるとした時が一時辰もすると魏無羨は次第に退屈になってきた。 夕餉の酉の刻にはまだ時間がある。 そうして思いついたのが虫干しだった。 昨日までの長雨で心なしか室内が湿っているように感じるのは気のせいではない筈だ。 魏無羨の突然の思いつきに、藍忘機はと言えば特に異論も唱えず、かたちばかりの許しを得ながら魏無羨があれもこれもと静室中を引っかき回し、ぞんざいに広げる書物を整然と並べ直しながら後に付いて回っていた。 虫干しと称して何か面白いものはないだろうかと魏無羨が書架や行李を漁っていた時、それは見つかった。 牀榻の布帛の帳の裏に隠れるように配置された紫檀の書架の一番下。 目に留まり難い場所にひっそりと置かれたそれは、艷やかな飴色をした品の良い渋張行李だ。 他のどれとも違い、とても丁寧に扱われながらも幾度となく開かれたであろうそれは、繰り返し手が触れる場所だけが濃い暗褐色に染まっている。 「この行李も書物か?」 そう聞きながらも返事を待つことなく手は既に蓋を開けていた。 魏無羨の声にゆるやかに振り返った藍忘機が、はっとしたように僅かに目を見開く。 「魏嬰……っ」 珍しく狼狽を滲ませた声に思わず手が止まった。 幾度か瞬きをして見つめるものの、藍忘機の視線はうろうろと魏無羨の手元の行李と床とを彷徨い、一向に交わる気配がない。 こんなにも動揺を露わにした藍忘機を見るのは初めてだ。 否、一度だけある。 櫟陽の宿屋で酒に酔った藍忘機が数々の奇行を繰り返し、一夜明けた時のあの顔だ。 今や仙督となり、常日頃から泰然とした姿勢を崩さない男が不意に見せた顔に、むくむくと悪戯心が湧き上がる。 言外に中を見るなと訴えかけているその顔に気づかないふりをして、魏無羨は床に座り込むと嬉々として行李の中身を広げていった。 「何だ何だ藍湛、そんなに慌てるなんて何を隠している?」 まさか春画でも隠しているのかとにわかに楽しい気分になり、中を漁る手が自然と急いたものになっていく。 だがしかし、そんな期待に反して、行李の中に丁寧に納められていたものは僅かに黄ばんだ古びた書ばかりだった。 それも書かれているのは何の面白みもない、藍氏の家規ではないか。 「何でこんなものがわざわざ仕舞われているんだ?」 一枚一枚取り出して広げて見るものの、何枚繰り返しても全く同じものしか表れない。 藍氏礼則から始まるそれは、座学時代に懲罰として課され、幾度となく書き写したことのある魏無羨には最早馴染みの文節だった。 今でも諳んじることが出来るほどだがそれは決して人に自慢出来るような理由ではない。 だがそんなことをまるで他人事のように思っている魏無羨は、自分以上にこの家規を一言一句すっかり暗記しているだろう藍忘機がこの書を大事に保管していることを不思議に思うだけだった。 最後まで同じものしか無いのかと、重ねられた書を広げることにいよいよ魏無羨が飽きてきた頃、不意にそれは現れた。 行李の底に近い場所から出てきたのは、一枚の絵だった。 墨一色で描かれたそれは、見目麗しい男の凛とした座姿を描いたものだ。 若竹のように真っ直ぐに伸びた背中と、清流の如く真っ直ぐに流れる髪が見事にその男の人となりを表している。 しかし手にした易経とは似つかわしくない、まるで簪のように髪に添えられた一輪の花が、その絵を何処か不思議なものに変えていた。 それは、座学時代に魏無羨が藍忘機を描いたものだった。 「藍湛、お前……あんなに怒っていたのに大事に取っていたのか!」 思わず上げた声に、端坐していた藍忘機の肩が僅かに揺れる。 目を向けると、玉のような白皙の美貌は常と変わらずとも、こんなところまで美しいのかと思う形の良い耳が陽光に照らされて薄っすらと淡紅色に染まっていた。 逸らされた視線は魏無羨を決して見ようとはせず、穴が開くのではないかというほどに床板の一点を見つめるばかりだ。 色を失うほどにきゅっと閉じた唇が何処か幼く見える。 腹を抱えて笑いたいほど愉快だと感じたのはほんの一瞬で、すぐに魏無羨は、今にも笑い出しそうなほどに大きく開けた口を閉じていた。 ほこほこと腹の内から温かくなるような何かが込み上げてくる。 それは紛れもなく喜びだ。 自分が描いた絵を、藍忘機が捨てずに持っていたことが堪らなく嬉しい。 そうして同時にまだ子供だったあの頃を思い出し、いつも不貞腐れたように真一文字に口を引き結び、無表情を貫いていた藍忘機への愛しさが込み上げてきた。 揶揄かうことも出来ず、しかし礼を言うのもおかしいような気がして、 「何で取っていたんだ?」 素直に浮かんだ疑問を魏無羨は口にした。 「確かにこれは俺の渾身の作だ。自分でも満足いくほどに上手く描けたと思っている。でもお前はあの時くだらないと言ってたし、その後すぐに俺が仕込んだ春画にお前は怒髪天を衝くほど怒って破り捨てただろ?てっきり同じように破ったかすぐに捨てられたと思っていたんだ。何でだ?」 純粋に知りたいと思った魏無羨の気持ちが伝わったのだろうか。 居ずまいを正し、漸く視線を合わせた藍忘機がひと呼吸置いてその理由を告げた。 「お前は絵の才がある」 捨てるには惜しい、と。 六芸に秀で、画才もあると自負していた魏無羨だが、藍忘機に真顔でそんなことを言われて嬉しくないわけがない。 だがしかし、思わず破顔する魏無羨に、 「花は余計だ」 藍忘機は続けてそう言い放った。 思わず手の中の絵に視線を落とし、指摘された花を見やる。 花弁を大きく開いた桔梗は藍氏の藍(あい)から思い浮かべたのだろう。 八重の芍薬などであれば藍忘機にはあまり似つかわしくないとも言えるが、品のある桔梗は我ながら的を得ていると思う。 だが藍忘機の美しさに確かに華美なものは余計だ。 藍忘機を花に喩えるならば百合の花だろうか。 否、それも華やか過ぎるかもしれない。 凛として涼やかで、慎ましい花が藍忘機には似合う。 あの時、自分は何を思ってこの花を描き足したのだろうか。 今となっては思い出すことも出来ないが、きっとこの桔梗のように心を開いて欲しいと願っていたのかもしれない。 それにしても、と魏無羨は思う。 『こんなことを言えるようになるなんて、藍湛も変わったな』 褒めておきながら蛇足だとばかりに批評するのは、魏無羨がこの絵を見つけたことへのささやかな仕返しなのだろう。 昔の藍忘機ならこんな気の利いたことなど一つも言えなかったに違いない。 目尻が下がり、自然と口角が上がる。 嬉しくて仕方のない魏無羨は、どうやっても笑みを隠すことが出来なかった。 ふと、その絵が埋もれていた書に目がいった。 家規を筆写したそれは、よくよく見ると書家と思えるほど綺麗な字を書く藍忘機のものではない。 隙間なく並ぶ文字は十分整っているのだが、ところどころに気の抜けたように崩れたものがあるのだ。 見慣れたものとは異なるが、どうしてか見慣れたもののようにも思える。 暫くの間それを眺めた後、魏無羨は唐突にそれに気付いた。 「……俺が書いたものか?」 にわかに信じられず、それでも聞かずにはいられずそう問いかけると、藍忘機は微かに聞こえるほどの小さな声で「うん」と首肯した。 「藍湛……」 改めて床の上に広げた紙を見れば、何枚かは一度乱暴に丸められたような跡があり、後にそれが丁寧に伸ばされたのだと見て取れた。 長い時間重ねられていたことで皺や折り目はすっかり伸ばされ、一見しただけではそうであったことは分からない。 手にしたそれを言葉もなくぼんやりと見つめていると、不意に藍忘機が言った。 「叔父上に見せることが出来なかったものだ」 そうして藍忘機の長い指がおもむろに差した先には、整然と並んだ文字に紛れるようにして、一文字分の大きさでどこかおどけた顔の兎の絵が描かれていた。 懲罰として課された筆写だった為、当然それは藍啓仁に提出されていたのだろう。 始めこそ手を抜く為に崩した草書を使い、誤字脱字をいかに誤魔化そうと違う方向に四苦八苦をして並々ならぬ努力をしたものだが、ものの数回でそれが懲罰の回数をいたずらに増やすだけだと悟った魏無羨は、今度はいかに綺麗な楷書を書けるかに心血を注ぐことにした。 ただでさえつまらない内容を書き写すのだ。 少しでも楽しみを見出さなければやっていられなかった。 この書はその努力の賜である為、魏無羨本人も一見して自分の書いたものだと気づかなかったのだ。 これは確かに魏無羨が書いたものだが、魏無羨本来の字では無い。 改めて広げた紙を一枚一枚手に取ると、やはり何処かに集中力を欠いて気の抜けたように崩れた文字があり、兎や亀などの小さな落書きが隠れるように描かれていた。 そうしてふとそのことを思い出す。 「筆写の数が増えていたと思ったのはこれのせいか?」 千回だった筈のそれが幾ら書き写しても終わりが見えず、そのうち面倒になり数えることをやめた。 この日が最後だと藍忘機に告げられるまで続けていたので実際に何回筆写したかは定かではなかったが、品行方正な藍忘機がこんなことで嘘をつく筈もないと信じていた。 それでも何処かで多いと感じていたのは、時折、悪戯心の赴くままに書いたこれらを藍忘機が抜き出し、その分の数を増やしていたからに違いない。 『何てことだ!』 今思えば分からないわけが無いのだが、あの頃の魏無羨は本気で分かるまいと思って愚行を繰り返していたのだ。 あまりに幼い行動に思わず自嘲する。 と同時に、手の中の、丁寧に折り畳まれて保管されていたであろう書を見つめていると、何とも言えない気持ちが奥底から込み上げてくるのが分かった。 この書を、この絵を、不夜天で別ってから藍忘機は幾度となく見ていたのだろう。 そうして、何処にいるともしれない自分を想ってくれていたのだろうか。 それを十六年もの間、繰り返し、繰り返し。 気付けば書を持つ手が微かに震え、目には熱いものが浮かんでいた。 どれだけ自分は想われていたのだろう。 今は生涯の知己と信じて疑うこともないが、かつてはそれを過去のものだと藍忘機に向けて口にしたことさえあったのだ。 口さがなく強い言葉を向けたこともあった。 それがどれほど藍忘機を傷つけたのかしれない。 先程まで浮かんでいた笑みは消え、魏無羨は堪らずに唇を噛みしめていた。 魏無羨が喋らなくなると途端に室内は静かになる。 聞こえるのは微かな風に揺れる梢の葉擦れの音と、遠くに聴こえる鶲の囀りだけだ。 そんな静寂を破るように、黙り込んだ魏無羨に代わって口を開いたのは藍忘機だった。 「絵の才はあるが、落書きの才は無い」 どれも同じだと指を差され、魏無羨は思わず顔を上げた。 そうして大きく見開いた目で手にした紙を見比べる。 言われてみれば、ところどころに描かれた絵は兎、亀、鳥の三種類しかない。 どの紙を見てもその三つが少しばかり形を変えて描かれているだけだった。 確かにこれではあまりにつまらない。 才があるとは言えないだろう。 「藍湛、お前……っ」 真面目腐った顔で尤もらしく指摘する藍忘機にどうにも我慢出来ず、次の瞬間には魏無羨は手にしていた紙を放り出し、腹を抱えて笑っていた。 止まらない笑いに、先程まで薄っすらと浮かんでいた涙が別の意図で溢れる。 涙で滲んだ視界に微かに口端を上げて微笑う藍忘機の姿が映った。 『お前とこんなふうにあの頃の話が出来るようになるとは思ってもいなかったな』 魏無羨が笑い、藍忘機がそんな自分を穏やかに見つめている。 そんな何でもないことがどうしてか嬉しくて仕方がなかった。 笑いながらとうとう床に転がった魏無羨は、そのまま障子を開け放した先に広がる空を仰ぐようにして体を横たえた。 くつくつと込み上げる笑いをそのままに、思うままに四肢を伸ばす。 そうして頬を撫でる微かに湿った風を感じながら、眩しいばかりの陽光を遮るように右手を額へと当てた。 笑いすぎて溢れた涙が一筋、こめかみを伝って肌を擽る。 見上げた姑蘇の空は、何処までも抜けるように青かった。 昨日pixivに投稿したものをこちらでも。 1日で観覧2,300超えにビックリしました。 フォロワーさんも増えて嬉しい限りです。 pixiv、改めて凄いです。 自分でも気に入っているお話なのでとても嬉しいです。 50話以降のcql知己忘羨です。 魏嬰が遊歴から戻ってきたばかりの頃のお話。 虫干しと称して静室を漁っていた魏嬰が見つけたものとは……。 座学時代を思い返す忘羨。 藍湛があれを大事に持っていたら、それが魏嬰に見つかったりしたらと思って書いたお話です。 原作魏嬰だと思い切り藍湛の前で笑って「この美人ちゃんは何て可愛いんだ!」となりそうですが、cql魏嬰はこんな感じでしょうか。 魏嬰はこんなことをやりそう、藍湛はちょっと独特の視点で物を見ていたら面白いと思って書きました。 遊歴から戻ったばかりなのでまだまだ知己知己です。 黙り込む魏嬰は知己の告白回の泣き笑いのあの顔で。 因みにcqlは字幕版派。 吹替はほぼ未視聴の為、口調は字幕版に寄せています。 EDは本国版が好きなので魏嬰の遊歴前に藍湛は仙督に就いています。 観音廟→秋 遊歴→秋冬春 再会→初夏 というイメージで書いています。 半年くらいの遊歴。 |