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QUELO

QUELO 【東6ホールゆ59a】

明日のスパコミですが、新刊はありません。
ポストカードの無料配布がありますので、よろしければいらして下さい。

来月のオンリーで出せるように頑張ります。
と言っても最近の状況ではどんな短い話でも自信ないのですが……。
既刊の印刷をしているんですが、こういう作業をやっていると新刊出したくなります。
やりたい装丁とかいっぱいあるんですけどねえ。
肝心の文章が全然書けないのでは…。
明日イベント行ってやる気をもらってこよう!

ちまちませっせと作業中。
文庫サイズはちますぎるので、紙袋を用意してみました。
そして味気ないので穴あけを。
あまり意味があるとは思えないですが…。
先走ってザクロ×桔梗のSSでも打ってみようかと思ったんですが、たった1回の登場ではまだまだ性格がつかめないというかそんなの書けるなら骸ヒバ書けよ(笑)
もういっそ小十郎×政宗とか書こうかしら(笑)

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「uno」 サンプル



「どうしたんです?もう終わりですか?」
薄汚れた瓦礫だらけのコンクリートの床に這い蹲る男の背中を踏みつけながら吐き出した声は、自分でも驚く程に冷たく温度を欠いたものだった。
呆気ないものだと思う。
目と目があった一瞬、直感のようなものでこの男なら自分を満足させてくれるかもしれないと感じたのだが、どうやらそれは期待外れだったようだ。
『君程度の人間ならいくらでも葬ってきた』
そうは言いながらも、男の目を見た瞬間に感じた何かは確かなものだと思っていた。
-----楽しめると思ったんですけどね。
隠せない落胆に理不尽な苛立ちさえ感じる。
今迄に幾度も味わってきたそれは、けれど期待していた分余計に強く感じて仕方が無かった。
-----このまま終わりにしましょうか。
何処にそんな力があるのか、口先では無い(けれど自分には物足りない)強さを持った男の痩身の背中をぼんやりと視界に捉えながら、謳うように胸の内でそう呟く。
そう思いながらも、しかし一思いにという感情は微塵も無かった。
もう充分に痛めつけたつもりだったが、湧き上がる加虐心は治まることを知らない。
自分でもそれが異常な性癖であることは分かっていた。
それでも抑えきれない高揚感に背骨を踏みしめた足に徐々に力を込めていけば、
「う゛……ぐ、ふ…っ」
漏れる呻き声によりいっそう興奮を煽られて、圧する力がさらに強いものへとなっていくのをますます止められなくなる。
このままもっと力を込めて背骨と肋骨をまとめて全部折ってしまうのもいい。
折れた骨が肺に刺さって、血を吐きながら苦しみ悶える姿を見るのは堪らない愉悦だ。
それとも、その細い綺麗な指を一本ずつ順番にへし折っていこうか。
無様に折れた十指を目の前に晒した次は、腕を片方ずつ折ってしまおう。
使い物にならなくなった腕をだらりとだらしなく下げた体を無理やり立たせれば、まるで操り人形のように踊り出すに違いない。
そんな体を揺らして蹴り上げてまた殴って。
吐き出す血反吐に真っ赤に染まる様を眺めるのもまた一興。
簡単に手折れてしまいそうな細首に両手を回して、じわじわと締め上げていくのもいいかもしれない。
なまじ力のある男のことだ。
敗北と抑圧を知らない男の屈辱と恐怖に歪むその顔は、きっと見ものに違いない。
「クフフフフ…」
抑え切れない興奮に体が昂ぶっているのを感じる。
この一瞬が堪らない。
どうやってこの手で殺めるか、それを決めるこの一瞬にどうしようもなく興奮して全身が瘧のように震えた。
他者の死はただそれだけでこの身に甘美な悦びを与えてくれる。
それを以って、己の生を感じる瞬間でもあった。
すんなりと指に絡まる絹糸のような黒髪を鷲掴みにして思い切り背後に引けば、仰け反るように喉笛を晒しながら、力無く俯いていた血だらけの顔が眼下に露になる。
切れた唇の端はこびりついた血が赤黒く固まり、そうして先程床に打ち付けたせいで割れた額からは、今尚鮮血が溢れて頬から顎へと赤い血筋を作っていた。
鼻につく血の匂いを甘いと感じるようになったのはいつからだろうか。
もう記憶にも無い、遠い昔のことだ。
気付けば、いつも自分のまわりには血が流れていた。
全てはあの日から始まり、そしてその終わりは何処までも先が見えない闇のように、暗く、遠い。
今はもう思い返すことも少なくなったあの頃をふと思い出し、その光景を掻き消すように目の前の顔に意識を戻す。
と、そこには自分だけを真っ直ぐに見返す鋭利な刃のような黒い双眸が存在し、そうしてそれに何故かふと、安堵にも似た何かを感じた。
-----…?
自身でも分からないそれに微かな疑問を感じながらも、けれど次の瞬間にはまるで無意識のうちに、再び、容赦ない力で掴んだ髪ごと頭部を床へと勢いよく叩き付けていた。
「…ぅ゛っ」
鈍い音と共に漏れる呻き声は、かつて同等のことを強いた人間とは比にならない程に小さく抑えたものだった。
何度も何度も、額を皹だらけのコンクリートに擦りつけるように押し付けても、それでも雲雀の口から漏れる声は微々たるもので、それは力を加えている骸自身、到底信じられるものでは無かった。
一体この細い体にどれ程の耐性があると言うのか、その精神力の強さは驚くばかりだ。
いっそ賞賛に値する。
悲鳴の一つでも、泣き声の一つでも上げれば可愛げがあるものの、血に濡れた唇から漏れる声は時折声にさえなっておらず、それを堪える為にきつく噛み締めた唇が色を失っているだけだった。
大の大人の男でさえ泣き叫ぶ程の暴力を与えているのだからその体に感じる痛みは相当のものだろうに、それでも雲雀は頑なに、声を上げることはおろか、息すらも漏らすまいと体を強張らせ続ける。
「随分と強情だ」
大抵の人間なら早々に根を上げる程の仕打ちに、何故こうも耐え続けることが出来るのか、甚だ理解出来ることでは無かった。
かつて自分が経験したそれは、その先に目的があったからこそ絶え偲び、そして乗り越えることが出来たのだ。
だがこの男の先には敗北以外何一つ存在しない。
敗北と同時にこの痛みから解放されるというのに、それでも指一本満足に動かせない体で抗い続ける意味は無い筈だ。
それ程この男にとって敗北を認めるということは赦し難いこととでも言うのだろうか。
だとしたら、とてつもなく高い自尊心と矜持だ。
-----ますます壊したくなる。
ぞくぞくと込み上げる悦びに、骸は意図したことではなくゆわりと笑みを浮かべていた。





膝を折り、床に両手を付いて息を乱し、数え切れない程の暴力を与えたせいで血や埃で薄汚れたシャツを纏った体の背後から腕を伸ばすと、隙が無く結ばれているネクタイの結び目に指を入れ、そうしてゆっくりと、わざと緩慢な仕草でそれを解いていった。
「…ッ」
息を詰めて体を暴かれる屈辱に顔を歪めながら、それでも抵抗出来ない手足をただ奮わせて絶えるしかない雲雀の横顔を至近距離で見詰め、首元から抜き取ったネクタイをはらりとその視線の前に見せ付けるようにして落とす。
指先を離れ、まるで息があるもののように緩やかな弧を描いて床に落ちたそれを横目に、今度はきっちりと喉元まで留められている釦へと指を伸ばした。
力任せに左右へと引いて、ぼろきれのようにその生地を引き千切るのもよかったが、そうすることよりもさらに屈辱的であろう方法を敢えて骸は選択した。
一つ一つ、上から順番に丁寧にそれを外していく。
釦が外れていく毎に耳元を擽る噛み締める奥歯の音が大きくなることに、堪らない愉悦を感じた。
雲雀程の男が自分の意思に反して、それも本来ならば抵抗することも容易い手管で服を脱がされていく屈辱は、きっと耐え難いものに違いない。
徐々に露になる白い胸元を覗き込めば、怒気のせいか、僅かに上気して桜色に染まっているのが見える。
すぐにでもそれに触れてみたい衝動を抑え、ゆっくりと焦らすようにして最後の釦を外すと、いっそ恭しい程の手付きでそのシャツを脱がしていった。
「…っ」
そうして最後まで脱がさずに手を止めた眼下に現れたその背中に、思わず息を飲み込む。

-----何て美しい。

感嘆の声を漏らさずにはいられない程、その背中は実に美しいものだった。
繰り返し与えた暴力で数多の痣がそこには散っているものの、それさえも美しさを際立てるもののように感じる程、目もあやに白く、そしてしなやかな半身に目を奪われずにはいられない。
くっきりと刻まれた真ん中の背骨のラインや、羽根の痕と称される陳腐な謂れすら信じてしまいそうな、なだらかに隆起した肩甲骨の突起、そして僅かに捻った脇腹に浮かび上がる肋骨の連なりと、そのどれもが一つの芸術作品のような完璧な美しさを放っていた。
否、完璧と呼ぶにはそれは不完全過ぎる。
成長途中の少年の体は細く脆弱なものだったし、決して完成された美しさでは無い。
けれどそのアンバランスな未完全さを純粋に綺麗だと思ったのだ。
そうしてわけもなく、それに欲情した。
細くても、痩せぎすの自分とは違う、しなやかな少年らしい体だ。
それが大切に庇護されている立場にある者のものだということは一目見ただけで分かった。
一見粗野に見えて、その実所作の一つ取ってもどこか育ちの良さが伺い知れる。
強さを礎にしたそれとは違う、滲み出るような高慢さもその証だ。
当たり前に我が儘を通せる立場にいる者だけが持つことの出来るその気概に、そして何の苦も知らずに育った綺麗な体。
ファミリーでの粗雑な扱いや逃亡生活を強いられていた自分には無いそれがひどく羨ましいと思ったのはけれどほんの一瞬で、すぐにそれは抑圧された感情の解放へと繋がれていった。
無性にこの体を傷つけたいと思ったのだ。
何人にも傷つけられたことが無いだろうこの体に(そうでなければこんなプライドを持てないはずだ)自分だけの傷をつけたくて堪らなかった。
-----そうだ、めちゃくちゃにすればいい。
自分だけがこの体に触れることが出来た証の痕を幾つも残して(注ぎ込んで)、そうして自分という存在をこの男の体に刻み込んでしまえばいい。
そうすればきっと。
-----きみは僕だけのものになる。





湧き上がる充足感に相反した一抹の不安にも似た感情を忘れるように、今度は、覆い被さっていた体を伸び上げて羞恥に染まりながらも真っ直ぐに自分を射竦める双眸を間近に捉えると、掌の代わりに割り入れた膝頭で押し上げるような刺激を性器に与えて雲雀の息を乱れさせた。
「く…ッ」
苦しげな声は今や快感の為だということが明らかで、けれどそんな声を漏らしながらも羞恥に堪えるように時折唇を噛み締める頑なな態度に、気付けば自然と股間を刺激する膝の動きは激しいものへと変わっていった。
「は…ッ、ん…ぅっ」
「…は……っ」
布地が擦れ合う衣擦れの音に、どちらともつかない荒い息遣いが重なるようにして薄暗がりの中に響く。
小さな顔の脇に両手を付き、浅く開かせた下肢の間に割り込ませた膝でぐいぐいと押し上げるような刺激を続けると、投げ出された指先が縋るものを探すかのように力無く蠢き、そしてコンクリートの床を爪先がやる瀬ない所作で引っ掻き始めた。
途中で脱がせることを止めてしまったせいで中途半端に肌蹴たシャツの合間から覗く胸の尖りは、まるでその存在を主張しているかのように触れてもいないのにぴんと勃ち上がっている。
涙で潤んだ瞳や、噛み締めていても徐々にだらしなく開いてしまう唇は零れた唾液で濡れて、最早その体が快感に流されていることは明白だった。
そうしてその体が放つ壮絶な色香に息を呑みながら、それまで以上に強く膝を押し上げた瞬間、
「ッ!」
撥ねるように雲雀の細い腰が浮き上がり、押し付けた膝にまで中の性器がびくびくと奮えながら精液を吐き出す感触が伝わるのが分かった。
途端にじわりと布地が熱く湿り気を帯びていく。
射精したのだと分かっても尚押し付けた膝での刺激を執拗に続けると、ぐちゃぐちゃと濡れたを音を立てながら雲雀の体がぶるぶると震えるような微弱な痙攣を繰り返した。
「は……っ…」
そして乱れた呼吸を繰り返しながら何度も跳ね上がる体が漸く床に沈むと、弛緩した体は壊れた人形のように四肢を投げ出したまま動かなくなった。
ただ激しく上下する胸元が生きている証を伝える。
だがよく見れば開いたままの両足は微かに震えていて、その衝撃の強さを今尚表していた。
見下ろす眼下の顔はいっそう濃い桜色に染まり、虚ろに空を見詰める漆黒の双眸は泣き濡れて今にも溶けてしまいそうだった。
ふと、ついと溢れた涙が一筋、切れ長の目尻からこめかみを通って黒髪の中に消える。
そうして濡れた睫毛が瞬きを一つ落とし、再び露になった黒い瞳が真っ直ぐに自分へと向けられた瞬間、
「…ッ!」
そこに再び火を灯したように宿った憎しみと怒りという色に、全身が総毛立ち、微かに残っていた最後の理性の糸が完全に切れる音を聴いたような気がした。




以上、9/15発行「uno」本文サンプルでした。
明日のご連絡です。

2008/09/15 闇鍋FEVER  TRC東京流通センターEホール QUELO(E-16)

新刊 「uno」  六道骸×雲雀恭弥 R18 コピー A5変形 P34 ¥300  
※多少の暴力描写・露骨な性描写有

痛めつけ、それでも屈しない雲雀を無理やり犯して屈服させようとする骸だが、次第に自分でも分からない感情に支配され始め…。


以下本文サンプルになります。

「どうしたんです?もう終わりですか?」
薄汚れた瓦礫だらけのコンクリートの床に這い蹲る男の背中を踏みつけながら吐き出した声は、自分でも驚く程に冷たく温度を欠いたものだった。
呆気ないものだと思う。
目と目があった一瞬、直感のようなものでこの男なら自分を満足させてくれるかもしれないと感じたのだが、どうやらそれは期待外れだったようだ。
『君程度の人間ならいくらでも葬ってきた』
そうは言いながらも、男の目を見た瞬間に感じた何かは確かなものだと思っていた。
-----楽しめると思ったんですけどね。
隠せない落胆に理不尽な苛立ちさえ感じる。
今迄に幾度も味わってきたそれは、けれど期待していた分余計に強く感じて仕方が無かった。
-----このまま終わりにしましょうか。
何処にそんな力があるのか、口先では無い(けれど自分には物足りない)強さを持った男の痩身の背中をぼんやりと視界に捉えながら、謳うように胸の内でそう呟く。
そう思いながらも、しかし一思いにという感情は微塵も無かった。
もう充分に痛めつけたつもりだったが、湧き上がる加虐心は治まることを知らない。
自分でもそれが異常な性癖であることは分かっていた。
それでも抑えきれない高揚感に背骨を踏みしめた足に徐々に力を込めていけば、
「う゛……ぐ、ふ…っ」
漏れる呻き声によりいっそう興奮を煽られて、圧する力がさらに強いものへとなっていくのをますます止められなくなる。
このままもっと力を込めて背骨と肋骨をまとめて全部折ってしまうのもいい。
折れた骨が肺に刺さって、血を吐きながら苦しみ悶える姿を見るのは堪らない愉悦だ。
それとも、その細い綺麗な指を一本ずつ順番にへし折っていこうか。
無様に折れた十指を目の前に晒した次は、腕を片方ずつ折ってしまおう。
使い物にならなくなった腕をだらりとだらしなく下げた体を無理やり立たせれば、まるで操り人形のように踊り出すに違いない。
そんな体を揺らして蹴り上げてまた殴って。
吐き出す血反吐に真っ赤に染まる様を眺めるのもまた一興。
簡単に手折れてしまいそうな細首に両手を回して、じわじわと締め上げていくのもいいかもしれない。
なまじ力のある男のことだ。
敗北と抑圧を知らない男の屈辱と恐怖に歪むその顔は、きっと見ものに違いない。
「クフフフフ…」
抑え切れない興奮に体が昂ぶっているのを感じる。
この一瞬が堪らない。
どうやってこの手で殺めるか、それを決めるこの一瞬にどうしようもなく興奮して全身が瘧のように震えた。


冒頭部分のみです。
こんな感じのお話になります。
まだ実は最後のシーンが終わっていないんですが……多分大丈夫、の筈(笑)
とりあえず今夜一晩頑張ります!
痛い描写の多いお話ですが、2人とも根本的には恋情を感じている設定です。
最後は甘くて切ない感じを目指しています。
是非是非お手に取ってやって下さいませ。
それにしても久々に他ジャンルのイベントで今からドキドキです。
そしてマイナーらしい骸ヒバの需要がどれだけあるか分からずに別の意味でドキドキ…。
か、買って頂けるといいなあ…(弱気:笑)


ところで増殖しました(笑)
気分を盛り上げる為に、こんなことやってる場合じゃないのにと思いながら、買ってきたPP袋に入れていそいそと壁にぺたり。
もう堪らない…(笑)
そんな幸せな骸や雲雀に囲まれながら最後の追い込みを頑張りたいと思います!
久々に今夜寝られないわ……おほう、頑張れぃっ!!!
2008/09/15
闇鍋FEVER【REBORNオンリー】 TRC東京流通センター QUELO(E-16)


配置が発表されていたのでひとまずご連絡です。
しかしビックリしました。
思わず数えてみたら、骸ヒバサークルが10もありませんでした……。
何てこったい!!!
どんだけマイナーなのかとショックを隠しきれません……。
骸ヒバは…駄目ですか?
もっと骸ヒバに愛をっ!!!(笑)
サイトのインフォメを更新しました。
既刊情報に明記してあるものは全て通販可能です。
新刊の通販も受け付けておりますので、ご希望の方がいらっしゃいましたら、メールにてお問い合わせ下さい。

こちらにもスパコミインフォメ

5/4(日) 東5ホール た40a QUELO

新刊 【meltdown】 高校生・忍足×検事・跡部 (P142/¥1000/R18)  

朝の通学の電車の中で、忍足は偶然、痴漢に遭っている女を助ける跡部を見かける。
それから暫く経ったある日、今度は跡部自身が痴漢の被害に遭っているところに遭遇、助けたことから跡部と親しくなる。
そうして自分でも気付かないうちに跡部という男に惹かれていって…。


以下サンプルです。
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忍足侑士が通う、都内でも有数の進学校である氷帝学園までの朝の通学時間はおよそ一時間弱。
その内、二つの路線を乗り継いで、学校の最寄駅までの東急東横線線に乗り換えるまでの、井の頭線に乗っている時間が約二十分と一番長い。
おまけにかなり混み合う為、毎日のこととは言え憂鬱な時間だ。
途中の明大前までの間は身動きが取れない程ではないが、それでも僅かに身じろぐだけで、密着した他人の顔が不快さも露に醜く歪められる。
九月とはいえ、今年の秋は夏がずるずると延長しているように気温の高い日が続いている。
そんな暑さがまだ残るこの季節では、さらに纏わり付くような湿気と熱気に車中の誰もが苦渋の表情を浮かべていた。
扉の上十五センチの場所に貼られた、『弱冷房車』の表示の文字が恨めしい。
それでも忍足は、今よりも暑い夏の間も、それよりももっとずっと前からこの車両のこの位置に乗り続けている。
理由はただ一つ、乗り換えに便利だからだ。
時間を有効的に使いたいと思えば、わざわざ下車駅の改札から遠い車両に乗ろう等と考えたこともない。
ただでさえ、渋谷駅での東急東横線の乗り場までは結構な距離を歩く為、極力無駄を減らしたいと思うのは至極当然と言える。
毎日同じ時間の同じ車両の同じ位置に乗るのが、当たり前のように続いている日課になっていた。
今日もそんな日常の中の有り触れた一日。
そうである筈だった。
襲い来る睡魔に堪え、何をするわけでも無く、おざなりに携帯を片手で弄りながら息苦しい時間が過ぎるのをただひたすらに待つ。
そうして、漸く中程の明大前駅に間もなく到着というアナウンスが流れた頃、ふいに一つ先のドアの方からその声は上がった。
「やめないか」
やけに耳に残る声だった。
凛とした声音が直接脳髄に響き渡るような感覚に、思わず背筋が伸びる。
有無を言わさない硬質な質感のその声に、周囲を取り巻く乗客の視線が自然とそこへと集まっている。
忍足もまた、つられるようにしてそちらへと視線を向けた。
僅かに回りから覗く程の高さにある後ろ姿を見つけ、その真っ直ぐに伸びた背中にそれが先程の声の主だと確信する。
さほど自分と身長差は無い。
高すぎる程でも無いのだが、それでもつい猫背気味に背を丸めてしまう自身とはまるで違う、ぴんと伸びた背中がその性格を表しているようだった。
男が僅かに顔の角度を変えると、重力に従うようにさらりと落ちた前髪の隙間から高い鼻梁が覗いた。
整った顔立ちだということがそれだけで分かる。
昂然とした声に見合った、実に綺麗な横顔だ。
男だと分かっていながら、忍足は思わずその横顔に見惚れた。


まるで初めて意中の女の携帯番号を手に入れたような感覚だ。
今朝方新しく登録された番号を、休み時間だけでなく、授業中までも飽きもせずに眺めていた。
アドレス帳を何度も開き、そこに並ぶ数字と名前を見詰める。
居並ぶ名前の中でも、それだけが特別なもののように感じるのだから不思議だ。
意味も無くその番号を頭の中で反芻しているうちに、すっかり全部の数字を記憶してしまった。
自分の携帯番号すらも危ういのに、そう思うとそんな自分が可笑しくて仕方が無い。
気付けば、自分でもそうだと分かる程に口元が緩んでいる。
「何?また新しいコでも落としたの?」
ふいに、手元の液晶画面に細い影が写りこむのと同時に、そんな言葉が頭上から投げかけられて忍足は顔を上げた。
「ずっと笑ってるよ?」
そう言いながら、伺いを立てることもなく目の前の空いた席に横向きに座り込んだのは、飴色の髪を緩く巻いた、何処か大人びた風貌のクラスメイトだった。
白い太腿が霰もなく見える短いスカートから伸びた細い足を組み、薄く化粧をした顔をこちらに向ける派手な顔立ちの彼女は、よく夜の渋谷で顔を合わせるうちに親しくなった、云わば同類だ。
お互いに遊んでいることを隠しもせず、明け透けな言い方と後腐れの無い気持ちのいい程にさばさばした性格が気に入って、校内でも時々こうして喋る、数少ない友人の一人と言える。
一回り以上年上好みの彼女にとって、自分が完全に対象外と言うのも気楽に付き合える理由の一つだ。
そんな付き合いだからこそ、らしくもなく浮かれている自分を見られるということに酷く羞恥を煽られた。
いつから見られていたのだろうか。
笑っていたという自覚があるだけに、途端に気恥ずかしく感じられた。
「それとも彼女でも出来た?」
遊び慣れたいい加減な男という看板を背負って歩いているような忍足が、一人の本命を作ることなど有り得ないとどこかで思っているのだろう。
言外にそんな相手が出来たならば言ってみろと言われているようで、思わず苦笑を浮かべてしまう。
「そんなんちゃうて」
けれど否定するように言った言葉に、
「だよねえ。彼女くらいでそんな嬉しそうな顔するわけないし」
あっさりと頷かれてしまえばそれはそれで妙に落ち着かないのだから勝手なものだ。
しかし実際、先程までしつこいくらいに眺めていた携帯番号の持ち主は、そんな対象になるような相手でも無いのだから仕方が無い。
女ならともかく、相手は男なのだ。
いくら見惚れる程の美貌の持ち主とは言え、さすがに男相手にそんな気を起こす程、不自由はしていない
「でもさ、そんな嬉しそうに笑ってる忍足なんて、すっごい久々に見た気がする」
「随分な言い草やん」
軽口を叩く目の前の相手に、つい苦虫を噛み潰したような顔を浮かべてしまう。


「奥、ええかな?」
顔馴染みの店員に軽く笑みを向けて答え、
「勿論どうぞ。まだ空いてますので、お好きな席でお待ち下さい」
軽く頷いてから、勝手知ったる店内を奥へと進んだ。
天井の高い店内は開放的で気持ちのいい空間だ。
昼間であれば大きな窓から陽光が差し込む席に座るのが定番だが、禁煙席でもあるので、喫煙者かどうか分からない跡部を考慮して、パーテーションの奥のスペースへと席を取った。
広いフロアに北欧やヨーロッパのアンティーク家具がゆったりと配置されたそこは、ほんのりと薄暗く、アルコールを飲むには雰囲気が適している。
跡部の嗜好は分からないが、全くの下戸ということも無いだろう。
仕事帰りに軽く飲むくらいには、と、そう思ってこの店を選択したのだ。
手前の明るいカジュアルなスペースには何組かの客がいたが、確かに此処にはまだ他に客がいない。
一番奥にある、使い古されて味の出ている革張りのソファーに腰を下ろし、そうして漸く目の前の男へと視線を向けた。
信号で立ち止まった後から一切口を開かない跡部は、何処か憮然とした表情で窓の方を凝視している。
そうしておもむろに、
「慣れてるな」
ぽつりと呟くようにそう吐き出した。
ネクタイを緩め、長い脚を優雅に組んでソファーへと背を預けるその姿は尊大で、けれど彼のその怜悧な美貌によく似合っている。
アームに片肘をついて指先で軽く唇に触れる仕草は、何処か優雅にさえ見えた。
「アルコールを扱ってる店じゃないのか?高校生がこんなところ制服で入っていいのかよ」
「別に、高校生やってこれくらいんとこなんか普通やろ」
確かにアルコールの種類が多いのが特徴の店だが、昼間はカフェとして営業している分、遅い時間でなければ制服姿の学生も少なくは無い。
それに今時、こんな繁華街でアルコールを一切扱っていない飲食店などあるだろうか。
さすがに制服姿でアルコールを飲むことは無いが、未成年だからというまっとうな理由で飲んだことの無い人間がいたらお目にかかってみたいものだ。
それとも、学制服姿の自分と連れ立って入ることに抵抗があるのだろうか。
静かで落ち着いた雰囲気が気に入っている店だからと思って此処に決めたのだが、選択を間違ったのかもしれない。
そんなことを思っていると、
「十年も経つと変わるんだな」
ふいに独り言のようにそう呟いた男が、ふわりと柔らかな笑みを浮かべた。
先程までの不機嫌さが嘘のような穏やかな表情に、思わず視線が釘付けになってしまう。
黙っていると何処か人を寄せ付けない硬質な趣の美貌が、ひとたび笑みを浮かべるだけで途端に華やかさを纏うのだから不思議だ。
仕事柄、そうそう笑うことも無いのかもしれないが、ふとした時にこんな表情を見せられると、余計にもっと普段から笑えばいいのにと詮無いことを思う。
けれどそんな表情を今自分だけに見せているという優越感を、何処かに感じているのも正直なところだった。
「十年なんて大して昔やないやん」
「まあそうかもしれないけどな。でも俺が社会人として働いていた時、お前はまだ中学生とか、下手すりゃ小学生とかそれくらいだろ。結構な時間だと思うけどな」
そう言いながら笑う男の笑みに魅了されながら、どうしてか、胸中は穏やかではいられなくなる。
当たり前に歳の差を感じさせる言葉に、わけもなく焦燥感を感じた。
決して背伸びをしたいわけでは無い。
過去に付き合ってきた女の中には跡部よりも年上もいて、そんな女とも対等に付き合えてきた筈だ。
たかが十年くらいの差など無いに等しいと思っていた。
けれどそう思えたのは、相手が女だったからなのだろうか。
そう考えれば確かに、どんな女も自分がいかに年上だと知らしめるようなことは言わなかった。
こんなふうにはっきりと歳の差を突きつけるような言い方をされたのは、跡部が初めてだ。
どんなに分かり切っていることでも、改めて口にされてしまえば実際問題面白くは無い。
年上だから甘えられると思っていた筈が、いつの間にか、年上だからこそ甘えたくないという気持ちに変わっていた。


唇を重ね、争うように互いの舌を絡め合う。
自分ばかりが求めていると思っていたせいか、跡部から先に伸ばされた舌先に唇を舐められた途端、何もかもが頭の中から吹き飛んでしまった。
押し倒した床の上に、さらに押し付けるように肩を押さえ込んで唇を貪る。
「ん…ッ、ふ…」
濡れた唾液の音の合間に漏れ聞こえる甘い声に、どうしようもなく体が煽られていくのを止められず、急いた欲望が体中を渦巻いて押し潰されそうだった。
滑らかな質感の唇を舌先でなぞり、夢中になってその感触を味わう。
しっとりと吸い付くような唇は、まるでそれ自体が甘い甘露のようだ。
「…ふ…ぅ……ん」
そうして耳に溶け込む吐息混じりの声もまた、ぐずぐずと体ごと溶かしてしまいそうな程に甘い。
昂ぶった体は発熱しているみたいに熱く、腕の中に閉じ込めた跡部の体もまた、衣服を介しても分かる程に体温が上がっているのが伝わってくるほどだった。
唇を重ね、こうして体温を感じているだけで、全身が溶けてしまいそうなほどに気持ちがいい。
今迄にしたキスの数々がまるで子供騙しに感じる程の快感を感じた。
もっと欲しい。
もっと、奥まで感じたい。
湧き上がる欲望のまま、そのキスをもっと深いものに変えようと舌先を伸ばしたときだった。
誘うように薄く開かれたあわいに舌先を差し込む前に、不意に伸びてきた跡部の舌先にぺろりと上唇を撫でられ、閉じていた瞼を反射的に上げる。
「っ!」
そうして、思いがけず視界に入ってきたその表情に思わず息を飲んだ。
はっきりとした欲情を露にした眼差しは、まるでそれ自体が意思を持っているみたいに熱を帯びていた。
散々吸い上げたせいで濡れた薄い唇は赤く染まり、そこからちらりと覗く舌先もまた、熟れたように赤く色づいている。
それらに魅入られたように動けずにいると、ふっと跡部が笑みを浮かべて吐息を吐き出した。
艶然としたその表情に、束の間見惚れる。
それから再び伸ばされた舌先に掬うように唇を舐められたのと同時、首元に回された腕に強く引き寄せられ、気付けば求められるままにまた唇を重ねていた。
だが煽られた熱情に流されながら舌先を伸ばそうとしたした次の瞬間、それよりも先に滑り込んできた熱い感触に、ぞくりと全身が嘘のように震えた。
「ん…」
零れた自分の声の甘さに驚く。
促されるままに開いた唇の間を縫って、細く尖らせた舌先が舐るように口腔を荒らしていく。
歯列の裏をなぞり、口蓋を舐められた途端、どうにもならない快感に勢いよく下肢の間の性器が跳ね上がったのを感じた。
堪らずに腰を僅かに捩ると、窮屈になり始めた下着の布地に擦られて余計に硬く膨らんでしまう。
与えるだけのそれしか知らなかった体が、与えられる快感にどうしようもなく煽られていった。
所在無さげに口腔を彷徨わせていた舌を掠めるようにして、跡部の舌先が何度も何度も、場所を変えては感じるポイントを容赦なく攻め立てる。
されるがままでいられたのはそれまでだった。
実際は幾らも経っていなかったのかもしれない。
「は…っ」
深く息を吸い込もうと跡部が唇を離した僅かな隙をついて、今度は自分の番だとばかりに勢いよく舌先を捻じ込んでいった。
「んッ…ぐ…っ…」
苦しげな声など全く無視をして、欲望のままに跡部の口腔を貪る。
喉を突く程に舌先を差し込み、口腔中を余すところなく掻き回した。
何度も何度も角度を変えて交じ合わせるうちに、だらしなく弛緩した唇の端から、どちらのものともつかない唾液がだらだらと顎を伝って零れ落ちては喉元を濡らしていくのが視界の端に映る。
次第に激しくなっていくそれに、気付けば頭の中が真っ白になって何も考えられなくなっていた。
交わす唾液の混じる粘着質な水音と、絡め合う舌の感触だけが世界の全てになる。
夢中になって重ね続けた唇を漸く解放した時には、まるで全力疾走でもした後のように二人とも息が上がっていた。
ふやけたように腫れぼったい唇の感触に、ずくりと下腹部が疼く。
キス一つで熱くなりすぎた体はもう引き返せない程に昂ぶって、これ以上ないくらいに跡部を欲していた。
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いつものタイプと違って展開のある話なので、あまりサンプルがUP出来なくてすみません。
出会ってすぐのところまでしかUPしていません(キスシーンは別)
この後、いろいろとあーしてこーしてぐるぐるぐるぐるありますので、そのへんは本編でお楽しみ下さい。
色っぽいシーンは、結構こういうキスとかの描写の方が最近は楽しかったりします。
なんていうか、えっちよりもやらしい感じが好きです。
こんな感じのキスも入れると、えちシーンは18ページくらいありました(笑)
今迄考えてみたら、現代パラレルってのも書いたことが無いんですよね。
あ、保険医はありますが。
あれもまあ、ストーリー性はあまり無い話だったので、ここまでしっかりした話は初めてかなと。
あの、ま、実際しっかりしてるかどうかはアレですが…。
とりあえずこんな感じのお話になっております。
いつもの淡々とした感じもありつつ、でも話としてもいろいろ展開のある感じになっているかと思います。
どうぞお手に取ってやって下さいませm(__)m

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