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唐突ですが、刀剣乱舞SSです。
オリジナル男審神者と大倶利伽羅。
顕現した肥前を酷使する審神者に大倶利伽羅がもの申しているお話です。




「おい」
前触れもなく響いた声に、緩慢な動作で文机に向かっていた男が振り向く。
僅かに片眉を上げて驚いた風を装っているが、その顔には何処か余裕さえ見て取れた。
付喪神故の、人よりも薄いとされる気配をこの男に気取られることはいつものことだ。
相変わらず薄気味が悪い。
「どうした、大倶利伽羅。お前から俺の部屋に来るなんて珍しいじゃないか」
何処か楽し気な表情で唇の片端を上げて男が言う。
そう問うていながらおそらくこちらが言わんとしていることは分かっているのだろう。
何処までも食えない男だ。
審神者と言われるこの男の力でこの世に顕現されて以来、既に数か月を共にしているが、かつての主達とは違う畏怖の念を感じずにはいられない。
無機物の刀剣から生み出された付喪神を、まるで本当の人のように扱うこの男と話していると、何もかもを見透かされているようで落ち着かない。
長居は無用だ。
性急に用を済ませようと再び口を開いた。
「いい加減にしてやれ」
常よりも低くなった声に男がまた僅かに片眉を上げる。
「肥前のことだ」
政府からの入電で新しく任命された特命調査により、一昨日顕現したばかりの新しい刀剣、肥前忠広。
幕末の剣士、岡田以蔵が使用したとされる脇差だ。
人斬り以蔵と呼ばれた男が使用していた刀剣だからか、口が悪く、随分と血の気の多い感が否めない。
「顕現してから休ませることなく出陣させている。錬度を上げる為とは言え、あまりにも無茶だろう」
新刀故か、姿は年の頃十代半ばとまだ若いが、それでもさすがに顕現した直後から自身の錬度を大幅に超える強靭な時間遡行軍と刃を交える戦場に出陣を重ねた挙句、重傷を負っては手入部屋に放り込まれ、即また出陣という無理を強いられれば限界というものだ。
口では強がりを言っているが、溜まる精神的な疲労は本体の修復とは別になる。
人の身体を持つということは実に厄介なものだ。
「あいつにはだいぶ資源を投資しているからな。元を取る為にも早いところ戦力になってもらわないと困る」
「だからと言って、錬度の上がっていない内から墨俣に出陣させるのはどうなんだ。時間遡行軍の弓や銃撃だけで重傷になったことが何度あったと思う」
顕現したばかりで錬度の高い男士と共に編成され、白刃戦に持ち込む前に弓や銃の遠戦で重傷を負い、何度帰城したか知れない。
「墨俣の後は延々厚樫山だ。厚樫山でも何度も何度も重傷を負っている。俺たちは疲労が溜まれば交代しているが、肥前はずっと出ている。今までだってここまで酷使する奴はいなかった筈だ。何であいつだけここまで無理を強いるんだ」
この本丸には審神者であるこの男に望まれて顕現した刀剣は数多いるが、ここまで短期間に錬度を上げさせる為に出陣を繰り返した刀剣は他にはいない。
ましてや軽傷や中傷はおろか、重傷を負ってですら行軍させる等、最早理解し難い所業に他の男士からも疑問の声が上がっている。
底の見えない男ではあるが、自分を含め、顕現した刀剣たちを大切に扱う、そういう男であった筈だ。
「珍しいな、大倶利伽羅。馴れ合わないお前がそこまで他の男士を気遣うなんて」
「そんなんじゃない」
茶化すような男の言葉に途端に居心地が悪くなった。
顔に張り付いた薄ら笑いが癪に障る。
「そう言えば燭台切もお前と同じことを言っていたな」
不意に出た名前に思わず視線が泳いだのが自分でも分かった。
そしてそれを見逃す男ではない。
「相変わらずいい男だよな。あいつも随分と肥前を気に掛けていたが妬けるな」
意味深な言葉の真意は測りかねるが、何かを返せば余計にこの男は面白がるに違いない。
「とにかく、少しは肥前を休ませろ。それだけだ」
見るに見かねてらしからぬことを進言している自覚はある。
これ以上余計な話は無用とばかりに踵を返した途端、
「何だ、大倶利伽羅。お前、燭台切に満足させて貰っていないのか。今度は肥前でも可愛がるつもりか」
投げかけられた予想だにしなかった下種な言葉に足が止まった。
「…何だと?」
振り返ると、火を付けていない煙管を咥えながら、下卑た笑いを浮かべた男が何処か剣呑な目を細める。
「なあ、大倶利伽羅。俺はお前のことも気に入っているんだ。欲求不満ならいつでも俺の部屋に来い。可愛がってやるぜ」
「っ!」
瞬間、込み上げる怒りに声を失う。
まるで見せつけるかのような、蛇のように舌で唇を舐め上げる仕草に嫌悪すら感じた。
こんな男の元に顕現してしまった己の運命すら途端に恨めしく思える。
もう話すことはない。
そう悟って再び背中を向けた途端、抗えない強い力で左肩を掴まれ、容赦なくその腕に囚われる。
そして男の熱い体温を感じた次の瞬間、ぬるりと耳殻を長い舌で舐められた。
「な…っ」
ぞわりと背中を這い上がる悪寒にも似た感覚に、自分でもそうと分かるほど体が跳ねる。
それでも逃れられない太い腕が、審神者であるこの男が自分よりも屈強であることを証明している。
底の見えない食えない男と称していながら、絶対的な強さを誇るこの男の元に顕現出来たことに刀剣としての喜びを感じずにいられないのもまた事実だ。
そしてそれを分かっているからこそ、実に性質が悪い。
「俺はな、大倶利伽羅、あいつこのことを心底気に入っているんだ」
鼓膜に直接響くように低い声が注がれる。
「肥前忠広、面白い男じゃないか」
「だったら…」
何故こうまでも無理を強いるのか、そう改めて問おうとした言葉はしかし、継げられた信じがたい言葉に遮られた。
「気に入っているからこそ、あいつを泣かせたいんだよ」
掠れた声が何処か睦言のように色を帯びている。
「あのクソ生意気なガキが泣きじゃくる顔を想像しただけで興奮するだろう」
まるで閨事を共にしているような、そんな興奮を隠せない男の雄を感じる声音に、出陣続きで久しく床を共にしていない男の感触を思い出して体の奥底が疼いた。
認めたくはないが徐々に体温が上がっていくのが分かる。
体が、欲している。
「あの細い体を組み敷いて、押さえ付けて、許しを請うまで泣かせて、ああ、堪らねえなぁ…」
抑えきれない興奮に上ずる男の声はもう、最早聞こえてはいなかった。




我ながら酷い鬼レベリングで肥前に入れ上げているなと自覚しているところをお話にしてみました。
久しぶりに文章書きました。
本当は漫画でサクッと笑えるお話にしたいところですが、私が書くと結局こうなります。
この後、大倶利伽羅は光忠とごにょごにょ。
政宗様ともちょっと違うイメージの審神者です。
丁寧語でも良かったのですが、南海先生と被ってしまいそうだったので男くさい感じにしてみました。
刀剣たちの閨事は全て把握している審神者。
因みに大倶利伽羅にちょっかいかけているのはからかっているだけ。
あいつらも欲求不満だったのかね、人の体を手にした途端、夜な夜な激しいものだと刀剣たちの関係を静観して面白がっているだけです。
本気になったのは肥前のみ。
審神者のドS心を掻き立てられて肥前の行く末はいかに。
いやもう本当に肥前がツボ過ぎて。
クソ生意気なことばかり言っては審神者にお仕置きを受ける、というか最早お仕置きを受けたいが為に生意気なことを言う無自覚のドM体質だと信じて疑いません。
自分の場合は不良息子を持ったおかんみたいな感じですが。
クソ生意気なことを言うけどお弁当はしっかり持って行って、美味かったとか言っちゃう息子のイメージ。
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